庭木の肥料の与え方
樹木を庭に植えると成長を抑えたい場合もありますが、多くの場合は花や実を付けたいと考えているはずです。植物には栄養が必要なので、適切な肥料の与え方を覚えてみましょう。逆に与えすぎもよくないので、適切な肥料の与え方を紹介します。
庭木の2つの肥料について
庭木に与える肥料は、大きく分けて2種類です。元肥(もとごえ)と追肥(ついひ)の2種類に分けられています。
元肥
元肥は緩やかに効く肥料を与えます。元肥は植え付け時に施す肥料のことです。若木のうちは成長が盛んなので、その分肥料も多く必要とします。
追肥
追肥は、肥料分が少なくなった土に栄養分を補う役割があります。
木を早く大きくしたいときは化成肥料を与えます。新梢の伸びる4月~5月や、充実した枝が伸びる8月~9月にはリン酸やカリ分を含んだ化成肥料を与えましょう。
一方で、ゆっくり効く有機質肥料は1月~2月ごろに与えます。春前に施す肥料は「寒肥(かんごえ)」です。有機質肥料は分解に時間がかかるので、じっくりと土に栄養を与えて、春からの成長にそなえます。
実がなってから与える肥料のことを、「お礼肥え(おれいごえ)」といいます。実がなりつかれた木に栄養を与えるための肥料です。
庭木の肥料の3大要素
庭木に与える肥料は、3つの成分が重要となってきます。窒素、リン酸、カリ分の3つの栄養素を与えるようにしましょう。
窒素
肥料の窒素分は、葉の成長に欠かせません。そのため「葉肥え(はごえ)ともいいます。
窒素を含む肥料は、庭木の成長に欠かせないタンパク質を補給します。葉や枝ぶりを充実させるために必要です。
しかし、窒素分が多すぎると、今度は花芽がつかなくなります。病害虫に対する抵抗力も弱くなるので、与えすぎは避けましょう。
リン酸
庭木に与える肥料のリン酸は、花を咲かせるための栄養素です。そのため、「花肥え(はなごえ)」「実肥え(みごえ)」といいます。
リン酸が充分あると花色が美しくなります。実の色や味もよくするので、花木や果樹には欠かせない栄養成分です。
庭木の花つきが悪いときは、リン酸の不足を疑いましょう。
カリ
庭木に与える肥料のカリは、根の成長に必要な栄養成分です。そのため、「根肥え(ねごえ)」といいます。カリは根の成長を促し、暑さや寒さに強くなるための根作りに必要です。
庭木の有機質肥料と無機質肥料
庭木に与える肥料には、有機質肥料と無機質肥料の2種類があります。それぞれ性質が異なるので、目的に合わせた肥料を選びましょう。
有機質肥料
有機質肥料とは、油粕、骨粉、魚粕、乾燥牛ふん、乾燥鶏ふんなどの動物性素材のものが多いです。粉末状や粒状、固形などの種類があります。
遅効性肥料が多い
有機質肥料は、土の中の微生物が分解して栄養を与えるものです。そのため、肥料を与える効果が緩やかで、危険性が少なくなっています。有機質肥料は元肥や寒肥をとして与えることが多いです。
油粕
油粕は油を搾った粕のことです。菜種油や大豆油などの残りかすを粒状や粉末状に加工しています。
油粕は発酵してゆっくりと効果が出る肥料で、発酵すると悪臭がするので土中に混ぜて使います。発酵するまで約3週間かかるので、元肥として使ってじっくり効果を出すときに役立ちます。
骨粉
骨粉とは、鶏や豚などの家畜の骨を粉末化したものです。主にリン酸を供給するために使われています。
骨粉もゆっくり効く肥料で、与えてから約1ヶ月で効果が出ます。種をまく前に土に混ぜ込む元肥に向いているでしょう。
魚粕
魚粕は、生魚を煮て乾燥させたものです。魚粕は窒素とリン酸を含むので、元肥や追肥に使うことができます。
窒素やリン酸は実を付けるために必要な栄養素のため、果樹や野菜などに向いています。骨粉よりも分解されやすい性質を持ちます。
乾燥牛ふん
同じ牛ふんでも、「乾燥牛ふん」と「牛ふん堆肥」の2種類があります。乾燥牛ふんは発酵処理をしておらずニオイが出るため、土に混ぜ込んで発酵させ栄養を補うタイプです。一方で牛ふん堆肥は発酵させたものなので、ニオイがありません。
牛ふんには肥料成分は比較的少なく、よい土作りに役立ちます。土の繊維質を高める目的で使うものです。土の保水性や水はけなどをよくするために使います。
発酵が未熟な牛ふんを使うと、逆に庭木を弱らせてしまうため注意が必要です。植え付ける直前に混ぜ合わせるのではなく、秋や冬に土に入れて十分発酵させてから使いましょう。
牛ふんに含まれるアンモニアはバラの成長に役立ちます。
乾燥鶏ふん
鶏ふんは、窒素、リン酸、カリの3つの栄養素がバランスよく含まれています。鶏ふんも乾燥させただけのもの、発酵させたものがあるので注意が必要です。
乾燥鶏ふんのほとんどは未熟な発酵のもので、土に混ぜると発酵が始まり臭いが強いです。未熟な鶏ふんを混ぜると庭木の株を弱めてしまうので、事前に土に混ぜ合わせて発酵させたのち使います。
無機質肥料
無機質肥料は、鉱物を分解して作る肥料のことです。窒素、リン酸、カリのうち2種類以上の成分が含まれています。
化学合成した成分を配合したもののことを化成肥料といいます。無機質肥料は庭木の成長に必要な、窒素、リン酸、カリの3大成分をはじめ、ミネラル分も補えるものがあります。
即効性肥料が多い
無機質肥料は即効性肥料が多いので、すばやく庭木に栄養を与えるときに役立ちます。庭木に必要な栄養成分だけが含まれているもので、微生物の影響を受けずニオイがありません。
即効性があることから、無機質肥料はお礼肥に使うことが多いです。その代わり、無機質肥料ばかりを使い続けると、土中の微生物量が減少してしまいます。肥料は無機質だけでなく有機質も与えるようにしてください。
化成肥料は緩効性と即効性の2種類があります。即効性肥料は栄養が足りない場合に便利ですが、肥料焼けの危険性もあるので、過剰に使いすぎるのは避けましょう。
大粒の化成肥料は、緩効性肥料として役立ちます。土中の肥料分が少なくなると溶けだす仕組みで、初心者でも簡単に木に栄養を与えやすいでしょう。
庭木の肥料の与え方
庭木に与える肥料の種類を理解したら、次は肥料の与え方を覚えてみましょう。肥料をただやればいいわけではなく、株に栄養を与えて弱らせない工夫が必要です。
根に触れないように与える
庭木の肥料は、基本的に根に触れないように与えます。木は丈夫なように見えて、肥料が直接触れると株が弱ってしまうので注意が必要です。
株が大きくなってくると、多少肥料が根に触れても影響が少なくなります。
木の根は株元近くではなく、太い根が地中に張っていることが多いです。そのため肥料は幹の近くに与えないで、幹から離して与えたほうが効率良くなります。
元肥の与え方
庭木を植え付ける際に、元肥を与えます。根に直接肥料が当たらないようにしたいので、土を深く掘ってから肥料を与えましょう。
掘った穴の底に、有機質肥料などの元肥を与えます。その上から土をかけてから、苗を植え付けてください。肥料と根は、20cm以上離れるように土をかぶせましょう。
追肥の与え方
追肥は植えてある庭木に肥料を与えることです。追肥には輪状に与える「輪状施肥」と、何か所かにわける「放射状施肥」の2種類があります。
輪状施肥
株の周りに追肥する場合は、枝の先端付近に溝を掘ります。円形状に10~20cmの深さに掘ってから、肥料をやって土をかける方法です。
放射状施肥
同じく株から少し離れたところに、何か所か穴を掘る方法です。1年おきにその間を掘って追肥するようにしましょう。
肥料が多すぎると枝葉が伸びすぎる
肥料は与えれば与えるほどよいわけではありません。肥料が多すぎると枝や葉が多くなりすぎて、混みあってくるでしょう。風通しが悪くなったり、花芽がつかない徒長枝が多くなったりします。
肥料のやりすぎで病害虫への抵抗力が弱くなる
肥料のやりすぎは、株が弱り病害虫への抵抗力が少なくなります。病害虫が発生しやすいときは、逆に肥料を抑えるほうがいい場合もあります。
肥料が不足すれば生育不良になる
肥料は少なければ庭木の生育に影響を与えるでしょう。山地に自生する品種では、肥料をほとんど必要ないものもありますが、それ以外は肥料が必要です。
まとめ
庭木の成長には窒素、リン酸、カリの3つの成分が必要です。初心者の方は肥料なら何でもいいと考えがちですが、肥料の種類によって成分が異なるので、適切なものを与えるようにしてください。
化成肥料は植物に悪いイメージを持つ方もいると思います。しかし、栄養が不足している植物に素早く成分を届けるために役立ちます。確かに化成肥料だけを与え続けると微生物が減ってしまうので、有機質肥料も同時に使いながら土壌を改良していけばいいでしょう。