果樹を鉢植えで楽しむ品種20選
「庭に果樹を植えるスペースがない」「気候が合わず希望の果樹を育てられない」そんな悩みを持っている方は、鉢植えで果樹を育ててみましょう。鉢植え栽培ができる果樹20種類を厳選して紹介します。
鉢植えで楽しめる果樹20選
1・みかん
カンキツ系はどれも栽培方法が一緒です。平均気温が15度以上の場所で栽培できます。カンキツ系は前年に実がなった枝には花芽ができません。実をつけるためには摘果をおこない、調節が必要です。
2・ぶどう
ブドウの木はつるが伸びるので、管理しやすく移動も容易なトレリスで仕立てる方法がおすすめです。雨に当たる場所を避けて管理しましょう。ブドウは芽かき、つるの剪定、花穂の整理、摘粒、袋かけの作業を覚える必要があります。
3・オリーブ
オリーブは太陽がよく当たる温暖な場所を好みます。芽吹く力が強いので、剪定も用意です。オリーブは1本では実をつけないので、数種類一緒に植えましょう。葉が美しく1本だけ植えても観葉植物として楽しめます。
4・キウイ
キウイはつる性の植物なので、つるの管理を覚える必要があります。鉢植えではトレリスに誘引して仕立てるのがおすすめです。実がならない枝を切り戻すと、翌年実がなります。キウイは2種類一緒に育てないと実がなりません。
5・さくらんぼ
実をつけるさくらんぼの木は、寒冷地を好みます。暖地では実がなりにくいので、「暖地桜桃」のような品種を選びます。実がなるときに雨に当たると実が割れやすいので、雨よけの対策が必要です。
さくらんぼの木は放任すると大きくなるので、新梢を切り詰めコンパクトに仕立てます。また、頭を押さえて樹高を抑えましょう。「佐藤錦」は自家受粉できないので2種類植えます。
6・ブルーベリー
ブルーベリーは自家受粉しますが、2種類植えると実がなりやすいです。株立ちに育つので、古くなった枝を根元から切りとり、新しい枝へと更新させましょう。用土は酸性土壌を好むので、ピートモスを混ぜるようにします。
7・ウメ
ウメの木は樹勢が強く徒長枝が出やすい品種です。放任すると大きくなりすぎるので、Y字に仕立てて成長を遅くしましょう。枝を剪定して日が当たり、蒸れにくくするのがポイントです。
ウメは1本だけでは実がつきにくいので、2種類を鉢植えで管理する必要があります。「八郎」「竜峡小梅」は自家結実性に優れているタイプです。
8・ユスラウメ
ユスラウメは暑さや寒さに強い果樹です。自家受粉するので1本でもよく実がなります。放任して育てると小枝が増えて日当たりが悪くなるので、細かい枝を剪定するようにします。
9・桃
暖地はモモの栽培がよく、ネクタリンは寒冷地向けです。剪定は落葉期におこないます。注意したいのが摘心する位置で、深く切り過ぎると枯れるので避けましょう。モモは枝先を切りとりながらコンパクトに仕立てます。
10・スモモ・プルーン
スモモやプルーンは樹勢が強いので、新梢を整理してコンパクトに仕立てる必要があります。逆さ枝や平行枝を間引きしながらすっきりとさせましょう。同じ切り口から枝が数本出てきたら、1本だけ残して切り詰めます。
ある程度の樹形が整ってきたら、梅雨時に枝先を1/3切り詰めてコンパクトに仕立てます。2年目からは実がなるので、摘果して実を太らせましょう。小枝が増えてきたら冬に整理するよう剪定します。
11・アンズ
アンズは夏の暑さに弱いので、夏の夜に涼しくなる地域で栽培が可能です。1本でも実がなる品種が多く、栽培が容易で初心者でも育てやすいです。スモモやプルーン同様樹勢が強いので、間引き剪定が必要になります。
12・リンゴ
リンゴは北海道など寒冷地での栽培に適しています。自分の花粉では授粉しないものが多く、2種類植える必要があります。夏に風通しや日当たりをよくするために、枝を間引きしましょう。
13・ナシ
ナシは寒さにも強く、日本全国で栽培が可能です。水はけがよい土を好むので、用土に注意しましょう。1種類では授粉しないので、2種類植え付ける必要があります。ナシは病害虫が多いので、果樹の管理に慣れた方におすすめです。
14・イチジク
イチジクは、葉が大きく水切れしやすいので乾燥に注意が必要です。枝が柔らかいので、変則主幹形や開心自然形などに仕立てることができます。
15・柿
カキの木は放任すると大きく育って実がなりにくいので、適度に切り戻しをして育てます。V字に仕立てて誘引し、主幹から側枝を出させるように仕立てます。3年目から実をつけさせるのがおすすめです。
カキは摘蕾や摘果をしながら、実の数を減らす作業が必要です。花芽は頂部につくのでむやみに刈り込むのは避けて、徒長枝や細くて短い枝は剪定します。
15・栗
栗の木は大木になりますが、鉢植えで管理ができます。鉢植えで大きくしないコツは、植え付け時に切り戻し、3本主幹で成長を遅くすることです。栗は数種類植えないと実がなりません。
16・ナツメ
ナツメは暑さにも寒さにも強く、丈夫な果樹です。病害虫もほとんどないので、初心者でも扱いやすいでしょう。成長を抑えるために誘引するとよいです。1本でも実をつけることができます。
17・ザクロ
ザクロは霜に弱いので、霜対策ができる地域なら全国どこでも栽培が可能です。1本でも実をつけるので、家庭での鉢植えに向いています。花芽は前年に伸びた枝先にできるので、剪定に注意して管理しましょう。
18・ラズベリー
ラズベリーは耐寒性が強く-20度まで耐えます。夏場に高温多湿になるところでは育てにくいです。株立ちになるので、トレリスやネットに誘引して仕立てるよういします。
19・ビワ
ビワは暖かい気候を好む果樹です。平均気温が15度以上になる地域で栽培できます。花は冬に咲くので、冬の管理に注意しましょう。鉢植えでビワを育てると、実を生食できるだけなく、葉をお茶としても活用できます。
20・フェイジョア
フェイジョアは耐寒性がありますが、長い間マイナスになる場所では寒さ対策が必要です。剪定は間引きをしながら、日が当たるようにします。1本でも授粉できますが、数種類植えると実つきがよいです。
果樹を鉢植えで楽しむ基礎知識
庭に果樹を植えたいと思っても、日本の庭は広さが限られてくるので、多品種を植えることはできません。そんな場合でも鉢植えなら、複数の果樹を育てることができるでしょう。
たまにホームセンターや園芸店で鉢植えの果樹が売られている果樹を見かけることがあります。しかし、「プロだからできるんでしょ?」「素人には無理」と決めつけていませんか?
そんなことはありません。園芸初心者や一般の人でも、コツさえわかってしまえば鉢植えで実をならすことは可能です。鉢植えで果樹を育ててみたい方は、次の注意点をチェックしてみましょう。
栽培箇所
果樹を鉢植えで育てるうえで重要なのが、「日当たり」「風通し」です。果樹のほとんどは実をつけるために日光が必要で、蒸れると病害虫の発生になるため風通しの良さが必要になります。
幸い、鉢植えは移動が容易なので、日当たりを求めることは容易です。風通しは剪定方法を学べば確保することができます。
仕立て方
鉢植えで果樹を育てる場合は、鉢の大きさや置き場所に合わせて、仕立て方を変えます。果樹の種類によっても仕立て方が異なるので、それぞれあった方法を覚えておきましょう。
あんどん仕立て
つる性のブドウ、ベリーなどを仕立てるときに使います。鉢の周りに支柱を数本立てて、あんどんのように上から実を吊るすタイプです。つるを支柱に巻き付けるので、狭いスペースでもブドウを育てることができます。
小ルドン仕立て
横に支柱を広げる仕立て方です。主幹から2本の側枝を出し、横に広がるように仕立てていきます。ナシ、リンゴなどに向く仕立て方です。
主幹形仕立て
樹形が三角形の形に仕立てるやり方です。周囲に枝が広がるように仕立てていくので、自然樹形に近い形になります。カキ、リンゴ、モモ、栗などに向く仕立て方です。
開心自然形仕立て
主幹から3本の側枝を出して仕立てる方法です。樹高を抑えることができるので、狭い庭に向いています。カキ、ウメ、イチジク、フェイジョア、モモ、オリーブなどにおすすめです。
エスパリエ仕立て
リンゴやブドウなどをフェンスや壁面に仕立てるときに使います。主幹から側枝を左右に2本出していき、さらにその上にも2本、さらに上に2本と出していく仕立て方です。ヒメリンゴを壁面仕立てにするときにもよく使います。
変則主幹形仕立て
樹形を円錐型に仕立てるやり方です。主幹から側枝を出していくやり方で、上下のバランスが取れています。一定の樹高になるまで高さを出していく方法です。カキ、リンゴなどに向いています。
鉢
果樹を鉢で植える場合は、適した鉢を選ぶ必要があります。鉢は苗木の大きさに合わせて選ぶようにしましょう。最初は7~8号のものを選び、成長に合わせて10~12号に植え替えます。
安価な鉢を選びたい場合はプラスチック製が適していますが、通気性は悪くなります。果樹は通気性をよくしたいので、素焼きの鉢がおすすめです。
土
鉢植えで果樹を育てる場合は、「通気性」と「水はけ」のよい土を選びます。市販の果樹用土や、ブルーベリー用土など専用のものを選ぶと、迷わなくて済むでしょう。
園芸用に売られている用土は、赤玉土を30~40%混ぜ合わせます。赤玉土は水はけと通気性、保水性を保つためのもので、鉢植えの果樹栽培には欠かせません。
肥料
鉢植えで果樹を育てる場合は養分が限られるので、適切に肥料を与えます。ただし肥料の与えすぎもよくないので、注意しましょう。
肥料の3大要素
植物が育つためには3つの栄養素が必要です。「リン酸」は開花や実をつけるための肥料です。暑さや寒さから守る働きもあります。
「窒素」は葉つきをよくするための肥料です。ただし与えすぎると葉ばかりが増えてしまい、花や実がなりにくくなります。不足すれば葉が黄色くなってくるのでわかります。
「カリ」は根を張らすための肥料です。不足すると根張りが弱くなり、木の成長が悪くなります。病害虫に対する抵抗力も低下しやすいです。
3種類の肥料
鉢植えで果樹を育てている場合は、「元肥」「追肥」「お礼肥」の3タイプの肥料が必要です。元肥は植え付け時に与える肥料で、追肥は芽が出るときに、お礼肥は実の収穫後に必要となります。
有機肥料を中心に与える
肥料には「有機肥料」と「化成肥料」の2タイプがあります。有機肥料は油粕、骨粉、魚かす、牛ふん、鶏ふんなどのことです。土中の微生物によって分解されるため、ゆっくりと効果が出ます。
化成肥料は植物に必要な、リン酸、窒素、カリを含むもので、水に溶けやすく素早く栄養を植物に与えるために使います。化成肥料は便利ではありますが、リン酸、窒素、カリを時期によってバランスを変えなければならず面倒な部分があります。
有機肥料の油粕と骨粉は、時期に合わせて配合量を変える必要がなく手間がありません。
油粕と骨粉を混ぜ合わせて固形にした「ぼかし」を使うと便利です。ぼかしは毎年ずらして株に与えるようにします。
水やり
果樹を鉢植えで栽培する場合は、水やりがポイントです。いつも土が湿っていると酸素がいきわたらず、新しい根が増えず根腐れしてしまいます。
鉢植えは少し乾き気味に育てて、表面の土が乾いたらたっぷりと与えましょう。乾き気味で酸素が充分いきわたっていると新しい根が伸びて、少ない肥料を効率よく吸収できます。
夏場は乾燥しやすいので朝夕の2回、冬は週に1回の水やりです。夏の日中に水やりをすると鉢温が上がるので、午前中か夕方に水を与えます。日中に水やりしなければならないときは、鉢底から水が流れるくらいたっぷりと与えてください。
植え付け
果樹を鉢植えする場合は、新しい根と新梢を出すための作業が必要です。狭い場所で栽培する場合は、実を大きくするために、太い根を育てて葉の数を増やすことが必要になるためです。
苗木を入手したら、根の周りの土を落として鉢の大きさに合わせて根をカットしていきます。根の下の部分を切り詰めることで、新しい根の出を促しましょう。接ぎ木テープも剥がしておいてください。
地上部は接ぎ木部分から50cm上を切り詰めます。植え付け時はまだ根が張っていないので、ぐらつかないように支柱を立てて固定してください。
カンキツ類の場合は上のほうにある根は残します。上のほうにある根が木の成長に必要となるためです。
植え替え
鉢植えの果樹は2~3年に一度の割合で植え替えが必要です。2~3年で根詰まりをおこすので、一回り大きな鉢に植え替えましょう。
植え替えの目安は、「鉢が根でいっぱいになったとき」です。植え替えるときは、8号鉢なら10号鉢へ、10号鉢は12号鉢を選びます。
鉢から苗を引き抜き、上部1~2cmを取り除き、表面に出ている根を切りとります。鉢底に渦を巻くように張った根は、鉢底から1/3のところまで切り落としてから植え替えましょう。植え替えるときは必ず根を広げてください。
植え替えが困難になるほど大きくなった場合は、表面の土に数か所穴をあけて、肥料を混ぜた新しい土を入れます。
剪定
鉢植えで果樹を育てる場合は、実をつけるための剪定が最も重要です。光と風通しをよくして、栄養を実に集中させる必要があります。
間引き剪定
不要な枝を間引く場合は、必ず枝の付け根から切り落とします。枝数が増えすぎて日当たりや風通しが悪くなったら、適度に枝を間引いてください。
切り返し剪定
枝数を充実させて翌年の花芽のつきをよくする剪定です。枝先から1/3のところで切り返すと、新しい枝が発生して花つきがよくなります。切る場所は芽の上で、芽を上にして斜めに切り落とします。
植え付け後の剪定
植え付け後は根元から50cmくらいで切り詰め、主枝を発生させます。2~3年目は主枝を3~5本残して、後は間引きましょう。4年目は主枝を3本くらいに絞って後は間引き、主枝の先端を1/3に切り詰めます。
不要枝の見極め
不要枝を知っておくと、剪定が容易になります。ほかの枝に交差する枝、主幹のほうに向かって伸びる内向き枝、下向きに伸びる下垂枝、同じ方向に伸びる平行枝、同じ位置から複数出る車枝、上に長く伸びる徒長枝、ひこばえが剪定対象です。
誘引
植物は上に伸びる枝があると勢いよく伸びやすいので、鉢植えで果樹を育てる場合は誘引が必要です。誘引で枝を下向きにすることで、成長を遅くできます。
また、上に勢いよく伸びる枝は、花芽がつきにくいです。限られた樹高で実をつけるためにも、誘引作業が必要になります。
枝を紐などで下に引き誘引します。新梢で枝が柔らかいうちがよく、冬になると枝が硬くなって誘引しにくいです。
まとめ
果樹を鉢植えで育てる場合は、水はけのよい用土を選び、適切に肥料を与えて、実をつけるための剪定が必要です。鉢植えなら狭いスペースでも育てることができるので、幅広い家庭が楽しみやすいでしょう。